「実は馬券が当たったんだ。それで懐が少し暖かいんだ」「馬? おかしいな。あそこで出会った時に、馬が当たったとは言わなかった」「いや、あの時は売り上げが上がってなくて、正直あせっていたんだ」「どこの何レースを買ったんだ?」
「京都競馬の八レースを三連単で千円ほど買っていたんだ」何だよ急に、ニヤニヤと微笑んだりして。私、何かおかしい事を言ったか? 「へー、京都の八レースを三連単で千円も買っていたの。確か五―八―二と入った奴だったよな。これだから素人は怖い、あのレースで三連単を買うなんて、ドブに金を捨てるようなものだ。もっとも、それを当てたんだからな、素人とは言え、たいしたもんだ」
今度はどうして腕を組み、感心した様子を見せるんだ? それに山岡が言っている意味が、さっぱり分らん。知らないんだから、知らない素振りをしよう。「いつもみんな競馬の話を面白そうにしてるだろ。買ったとか負けたって、だから私も始めてみようかな、って思って適当に買ってみたんだ」
「そうか。だけど篠塚、いつも勝てるって思うなよ。今日当たったのはまったくの偶然だ。ところでその金、もう換金してるのか?」何かまずい予感がする。「ああっ、もう現金に換えているよ」「そうか、それなら一緒に飯を食いに行くか。いちど競馬で大勝ちすると、病み付きになるのは間違いないから、馬の勝ち方をしっかりと教えないとな」次のページに続く
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